【soarさんの仕事】
「五感で感じる世界の素晴らしさを表現したい」
Soarさんの描く山の絵は、鮮やかで深い色彩の奔流のようだ。
大学で美術を学んだ後、就職後はしばらく絵を描くことから離れていた彼女を、再び芸術の世界に引き戻したのは、同年代の友人の死と肉親の病気だったという。
「自分の生きる使命は何だろう?と考える様になり、自分にしか出来ない何かを残したいと思った。」
絵画表現の再スタートは、おのずから彼女が愛するアウトドアスポーツの世界と重なり合い、一つの世界観を醸成していくことになる。
「その時々で変わる山の景色、力強さを感じる海、草花や木々の匂い、田畑の食物を食べた時。自然と関わる事で様々な感動が生まれます。人と自然は必然として繋がっていて、その中で暮らしがあって、遊びがある。」それを表現したいのだと。
今回彼女が取り組んだのは、壮大なステンドグラスのような「山地図」の制作である。地図とはいってもいわゆる地図ではなく、旅の憧れや感動、現実に見る景色や季節の移ろいを絵画として織り込んだファンタジーの地図である。山地図を元にして、それを抽象化した緻密な下絵を出発前に描き、山荘で現実に感じた世界を一つ、また一つと色彩として塗り込んでいく。旅人が、足を踏み出すごとに世界の内奥に入り込んでいくように、彼女は色を塗り重ねることで、世界と一体化して行く。
来る日も来る日も、夜更けまで作画を続ける彼女の姿からは、計り知れない想いの深さや気迫を感じさせられる。アーティストたちの内なる旅を追体験することで、僕たちは、時に全く予期せぬ世界の情景に出会い、心に新しい炎が灯される。
それは、人が人であることの奇跡なのだ…しみじみとそう思った。
(文:伊藤二朗 撮影:森田友希、赤錆健二 編集:赤錆健二)
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