雲ノ平山荘

2024年9月12日より雲ノ平サイエンスラボ初となるイベントを開催いたします。
発起人が招待した各分野の研究者が雲ノ平山荘を訪れ、夕食後の食堂でレクチャーを行い、
集った人々と交流を深め、多様な視点から自然と社会をめぐる諸相を読み解きます。

  • 細菌学者が山を歩いて考えること

    アンデス高地に暮らす人びと
    とラクダ科動物とのかかわり

    時間:19:30-20:30

    登壇者:佃 麻美

    専門分野:文化人類学

  • 「人類社会の進化」という研究プログラム:「サルとヒト」をめぐる探究の今昔

    「人類社会の進化」という研究プログラム:「サルとヒト」をめぐる探究の今昔

    時間:19:30-20:30

    登壇者:森下 翔

    専門分野:文化人類学

  • 食文化からみる「自然」とのかかわり:ネパールの麹づくりから

    食文化からみる「自然」とのかかわり:ネパールの麹づくりから

    時間:19:30-20:30

    登壇者:工藤 さくら

    専門分野:宗教人類学、ネパール地域研究、食文化研究

  • 植物のゲノム倍数性と環境適応

    植物のゲノム倍数性と環境適応

    時間:19:30-20:30

    登壇者:佐藤 輝

    専門分野:植物分子生物学

  • 電子顕微鏡で探る自然のミクロワールド

    電子顕微鏡で探る自然のミクロワールド

    時間:19:30-20:30

    登壇者:豊岡 公徳

    専門分野:超微形態学・植物細胞生物学

  • 日野生イネの探索 in ミャンマー

    野生イネの探索 in ミャンマー

    時間:19:30-20:30

    登壇者:宇賀 優作

    専門分野:植物遺伝育種学


開催場所

会場 雲ノ平山荘
(食堂)
時間 19:30~
20:30
参加費 無料

登壇者

Kumo Lab Week 2024は登壇者を招いて講演会を行っております。

Kumo Lab Week 2024は登壇者を招いて講演会を行っております。

  • Vo.1
    Vo.1
    アンデス高地に暮らす人びととラクダ科動物とのかかわり
    アンデス高地に暮らす
    人びととラクダ科動物との
    かかわり

    佃 麻美

    私はペルー南部のアンデス高地でアルパカ・リャマを飼う牧畜民について研究してきました。ラクダ科のアルパカ・リャマは南米で独自に家畜化されましたが、現在に至るまでその野生原種のビクーニャ・グアナコと共存しています。人の手が入り、「管理」されているのが家畜、そうではないのが野生動物と一般的には考えられていますが、アンデス高地に暮らす人びとは家畜だけではなく野生動物ともかかわりながら生きています。それぞれの動物とのかかわり方をみていくことで、家畜と野生の境界について考えます。


    佃 麻美

    佃 麻美専門分野:文化人類学

    1986年、徳島県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程満期退学。博士(人間・環境学)。2024年より東北大学東北アジア研究センター特任研究員(学振PD)。専門は文化人類学。幼いころにマチュピチュをテレビで見て憧れ、ペルーで調査するに至った。最近の著書として、「山と町を往還する―グローバル化はアンデス牧畜をいかに変えたか?」シンジルト(編)『目で見る牧畜世界』風響社(2022年)。

    佃 麻美

    佃 麻美
    専門分野: 文化人類学

    1986年、徳島県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程満期退学。博士(人間・環境学)。2024年より東北大学東北アジア研究センター特任研究員(学振PD)。専門は文化人類学。幼いころにマチュピチュをテレビで見て憧れ、ペルーで調査するに至った。最近の著書として、「山と町を往還する―グローバル化はアンデス牧畜をいかに変えたか?」シンジルト(編)『目で見る牧畜世界』風響社(2022年)。

  • Vo.2
    Vo.2
    「人類社会の進化」という研究プログラム:「サルとヒト」をめぐる探究の今昔
    「人類社会の進化」
    という
    研究プログラム:
    「サルとヒト」を
    めぐる
    探究の今昔

    森下 翔

    伊谷純一郎以来の日本の人類学は、サルとヒトの社会を並列的に比較・研究する独自の研究伝統を持っている。この研究伝統は細々とではあるが現在まで続いており、2007年度から2023年度まで「人類社会の進化」という大きな研究プログラムの下、霊長類学者と人類学者の共同研究が実施されてきた。本発表では、サル学・生態人類学の黎明期から最近の発表者の霊長類学者との協働に到るまで、広汎な「サルとヒト」をめぐる研究について紹介する。


    森下 翔

    森下 翔専門分野:文化人類学

    山梨県立大学地域人材養成センター特任助教。専門は文化人類学・科学技術の人類学。科学者を研究対象とし、地球物理学者・霊長類学者・量子技術者らの参与観察研究を実施してきた。近年は科学者と協働で萌芽科学技術の社会実装に係る課題を検討する応用的研究も行っている。2017年頃から霊長類学者と人類学者の共同研究に参加し、2024年頃から霊長類学者の環世界と身体性をめぐる検討をはじめている。

    森下 翔

    森下 翔
    専門分野: 文化人類学

    山梨県立大学地域人材養成センター特任助教。専門は文化人類学・科学技術の人類学。科学者を研究対象とし、地球物理学者・霊長類学者・量子技術者らの参与観察研究を実施してきた。近年は科学者と協働で萌芽科学技術の社会実装に係る課題を検討する応用的研究も行っている。2017年頃から霊長類学者と人類学者の共同研究に参加し、2024年頃から霊長類学者の環世界と身体性をめぐる検討をはじめている。

  • Vo.3
    Vo.3
    食文化からみる「自然」とのかかわり:ネパールの麹づくりから
    食文化からみる
    「自然」との
    かかわり:
    ネパールの麹づくり
    から

    工藤 さくら

    本発表では、ネパールの酒づくりで用いられる麹(以下、餅麹)に着目して、人びとが「自然」を利用し植物や菌と共生するあり方について考えてみたい。酒づくりに用いられる餅麹には、発酵を促すスターターとしてよく分からない植物の葉や根が混ぜられることがよくある。その植物は名前や流通ルートなどがはっきりしなかったり、積極的に栽培されていないけれど集落内にあえて生やされていたりする。このような適当さに反して、餅麹は酒の出来を決定づける要素とされており、製造過程においては邪視(誰かの嫉妬に起因する失敗)を避ける行為や行商ルートについても秘密ごとが多い。飲酒文化は、主にネパール語を母語としないチベット・ビルマ語属の非ヒンドゥー教徒のあいだで多くみられ、人生儀礼や祭りなどで現在も必要とされる。本発表では、ネパールの中間山地地帯に位置する3つの民族の事例を概観しつつ、有用植物の活用の知恵や信仰との関わりについて取り上げる。


    工藤 さくら

    工藤 さくら専門分野:宗教人類学、ネパール地域研究、食文化研究

    1986年岩手山のお膝元、岩手県滝沢市生まれ。
    2019年東北大学大学院学位取得、同大学 災害人文学プロジェクト研究員、日本学術振興会特別研究員PDなどを経て、現在、国立民族学博物館・特任助教/人文知コミュニケーター。
    ネパールのカトマンズ盆地に住むネワール(族)の儀礼文化の研究をしているが、生業と人の知恵のかかわりに関心を持つようになり中部・東部ネパール、北東インドでの発酵食品の研究も二本柱で行っている。2020年関西に移ってきたのをきっかけに山登りを始める。好きな山は、比良山系の武奈ヶ岳。

    工藤 さくら

    工藤 さくら
    専門分野:宗教人類学、ネパール地域研究、食文化研究

    1986年岩手山のお膝元、岩手県滝沢市生まれ。
    2019年東北大学大学院学位取得、同大学 災害人文学プロジェクト研究員、日本学術振興会特別研究員PDなどを経て、現在、国立民族学博物館・特任助教/人文知コミュニケーター。
    ネパールのカトマンズ盆地に住むネワール(族)の儀礼文化の研究をしているが、生業と人の知恵のかかわりに関心を持つようになり中部・東部ネパール、北東インドでの発酵食品の研究も二本柱で行っている。2020年関西に移ってきたのをきっかけに山登りを始める。好きな山は、比良山系の武奈ヶ岳。

  • Vo.4
    Vo.4
    植物のゲノム倍数性と環境適応
    植物のゲノム倍数性と
    環境適応

    佐藤 輝

    「ゲノム」という言葉は「その生物種を構成する遺伝子情報の総体」を意味しており、例えばヒトでは23本の染色体の1セットを「ゲノム」と呼ぶことができます。ヒトを含め多くの動物ではこの染色体を2セット持っていて、このような生物は「2倍体」と呼ばれています。ところで植物ではこのゲノムを4セット、6セット、8セット・・・と持つ種も珍しくなく、特に高山植物ではゲノムセットの数が多いことが知られています。その理由は高山環境への適応のため、そして過去の地球への隕石衝突も関与することが近年分かってきました。


    阿部 章夫

    佐藤 輝専門分野: 植物分子生物学

    2015年、東京大学応用生命化学専攻博士課程修了。その後理化学研究所、Swedish University of Agricultural Sciencesで研究員として勤務し、現在東京大学新領域創成科学研究科で特任助教として在籍。主に植物のモデル生物であるシロイヌナズナを用いて環境ストレス応答、環境適応の分子メカニズムの研究に従事する。

    阿部 章夫

    佐藤 輝
    専門分野:
    植物分子生物学

    2015年、東京大学応用生命化学専攻博士課程修了。その後理化学研究所、Swedish University of Agricultural Sciencesで研究員として勤務し、現在東京大学新領域創成科学研究科で特任助教として在籍。主に植物のモデル生物であるシロイヌナズナを用いて環境ストレス応答、環境適応の分子メカニズムの研究に従事する。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    モンゴルの移動式住居ゲルでの暮らしと空間利用
    電子顕微鏡で探る
    自然のミクロワールド

    豊岡 公徳

    私は顕微鏡を使って、生物のミクロの世界を観察・撮影する専門家です。山や野原を歩いていると、草花や昆虫、苔などが目に入りますが、それらを顕微鏡で拡大すると、普段見えない細部が驚くほど鮮明に見えてきます。このレクチャーでは、光学顕微鏡と電子顕微鏡で撮影した微細な世界の美しい写真を通じて、未知の自然の姿をご紹介します。


    豊岡 公徳

    豊岡 公徳専門分野:超微形態学・植物細胞生物学

    1974年長野県生まれ。東京都立大学大学院で電子顕微鏡技術を学び、国立国際医療研究センターで細胞内寄生性細菌の研究に従事。2002年に理化学研究所へ入所し、電子顕微鏡観察系を立ち上げる。2007年から大型顕微鏡の管理運営や共同研究を行い、2013年より環境資源科学研究センター上級研究員、2018年より現職。植物細胞の物質輸送や超微細構造物の可視化に挑む。風戸賞、日本植物学会特別賞受賞。博士(理学)。

    豊岡 公徳

    豊岡 公徳
    専門分野:
    超微形態学・植物細胞生物学

    1974年長野県生まれ。東京都立大学大学院で電子顕微鏡技術を学び、国立国際医療研究センターで細胞内寄生性細菌の研究に従事。2002年に理化学研究所へ入所し、電子顕微鏡観察系を立ち上げる。2007年から大型顕微鏡の管理運営や共同研究を行い、2013年より環境資源科学研究センター上級研究員、2018年より現職。植物細胞の物質輸送や超微細構造物の可視化に挑む。風戸賞、日本植物学会特別賞受賞。博士(理学)。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    日本と雲南の山間集落から考える「自然」の価値
    野生イネの探索
    in ミャンマー

    宇賀 優作

    私は作物の育種(品種改良)に関わる研究をしています。近年、地球規模の環境変化に対応した品種改良が強く求められています(例えば、干ばつや高温に強い品種など)。この品種改良に必要なのが「遺伝資源」です。遺伝資源と言うと分かりにくいですが、要は品種改良に利用できそうな植物をすべて遺伝資源と呼びます。遺伝資源からは近代品種が持っていない育種に役立つ特性(例えば、干ばつや病気に強いなど)が見出されています。しかし、人類の経済発展とともに、大規模な自然破壊や近代品種の急激な普及が進み、この貴重な遺伝資源は失われつつあります。遺伝資源は一度失われると二度と復活することはありません。品種改良の観点から世界中で失われつつある遺伝資源の収集・保存・評価はとても重要です。今回の講演では、遺伝資源の保存と活用の一環として我々の研究所が実施したミャンマーにおける野生イネの探索についてお話しします。


    阿部 朋恒

    宇賀 優作専門分野:植物遺伝育種学

    農業・食品産業技術総合研究機構作物研究部門作物デザイン研究領域 グループ長
    1974年香川県生まれ。東京農業大学国際農業開発学科卒、筑波大学大学院博士課程農学研究科修了。博士(農学)。博士課程中、フィリピンにある国際イネ研究所に2年ほど留学。その後、農業生物資源研究所ジーンバンクにてミャンマーの野生イネに関する研究に従事。同研究所・QTLゲノム育種研究センターに異動後は、根の改良を通して干ばつなどの環境ストレスに強いイネの開発に取組み、現在に至る。趣味はバックパッカー(今は研究で海外に行くことが多い)、山での瞑想など。

    宇賀 優作

    宇賀 優作
    専門分野:
    植物遺伝育種学

    農業・食品産業技術総合研究機構作物研究部門作物デザイン研究領域 グループ長
    1974年香川県生まれ。東京農業大学国際農業開発学科卒、筑波大学大学院博士課程農学研究科修了。博士(農学)。博士課程中、フィリピンにある国際イネ研究所に2年ほど留学。その後、農業生物資源研究所ジーンバンクにてミャンマーの野生イネに関する研究に従事。同研究所・QTLゲノム育種研究センターに異動後は、根の改良を通して干ばつなどの環境ストレスに強いイネの開発に取組み、現在に至る。趣味はバックパッカー(今は研究で海外に行くことが多い)、山での瞑想など。