雲ノ平山荘

2023年9月17日より雲ノ平サイエンスラボ初となるイベントを開催いたします。
発起人が招待した各分野の研究者が雲ノ平山荘を訪れ、夕食後の食堂でレクチャーを行い、
集った人々と交流を深め、多様な視点から自然と社会をめぐる諸相を読み解きます。

  • 細菌学者が山を歩いて考えること

    細菌学者が
    山を歩いて考えること

    時間:19:30-20:30

    登壇者:阿部 章夫

    専門分野:細菌学

  • 植物もお酒が好き!?

    植物もお酒が好き!?

    時間:19:30-20:30

    登壇者:戸高 大輔

    専門分野:植物学

  • 山岳空間の近代史

    山岳空間の近代史

    時間:19:30-20:30

    登壇者:一色 智仁

    専門分野:建築史

  • タイトルが入ります

    スマホと山伏

    時間:19:30-20:30

    登壇者:天田 顕徳

    専門分野:宗教社会学

  • モンゴルの移動式住居ゲルでの暮らしと空間利用

    モンゴルの移動式住居ゲルでの
    暮らしと空間利用

    時間:19:30-20:30

    登壇者:寺尾 萌

    専門分野:社会人類学

  • 日本と雲南の山間集落から考える「自然」の価値

    日本と雲南の山間集落から
    考える「自然」の価値

    時間:19:30-20:30

    登壇者:阿部 朋恒

    専門分野:社会人類学


開催場所

会場 雲ノ平山荘
(食堂)
時間 19:30~
20:30
参加費 無料

登壇者

Kumo Lab Week 2023は登壇者を招いて講演会を行っております。

Kumo Lab Week 2023は登壇者を招いて講演会を行っております。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    細菌学者が山を歩いて考えること
    細菌学者が山を
    歩いて考えること

    阿部 章夫

    私は細菌学者です。大学での研究,武術で身体を鍛えるのが日々のライフサイクルです。東京での生活は気に入っておりますが,煮詰まってくると山や海に行きたくなり,テントやタープで寝泊まりすることが大好きです。装備をミニマルにするなかで自分の身体を守るのにはどうしたら良いのか?を考えることにもワクワクします。縦走をする上でフイルターろ過の浄水器はとても重宝します。市販のフィルターろ過の孔径は 0.1~0.2 µm であり,細菌(1~10 µm)やエキノコックスの虫卵(約30 µm)などを除去することが可能です。一方,ノロウイルスの大きさは 0.03 µm なのでフィルターろ過では除くことができません。なので,水源の清浄度も大きく関わり,動物のし尿による汚染は常に考えておく必要があります。たとえば,O157 腸管病原性大腸菌を持っているウシは,300万から300億個のO157を毎日排出しますので,土壌や湖沼の汚染に繋がっております。
    病原体による環境汚染はマダニによって媒介される重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の事例もあり登山にも注意が必要です。マダニに咬まれた場合はピンセットのようなもので取り除くよりもワセリンで刺咬部をダニごとたっぷりと覆うことで簡単に除くことが可能です。ワセリンは靴擦れ,火傷,傷口の処置にも有効です。
    登山の装備のなかで皆さんも様々な工夫をされているかと思われます。山を行き交う人々の交流は,その一方で病原体の拡散にも繋がる可能性があります。細菌学者として自然環境と病原体の関わりについて,皆さんと楽しく語り合いたいと思います。よろしくお願いします。


    阿部 章夫

    阿部 章夫専門分野:細菌学

    1961年 福島県生まれ。1986年,北里大学大学院薬学研究科修士課程を修了し北里研究所に入所。1991年博士(薬学)を取得。1995年~1999年,University of British Columbia (Canada) に留学。北里研究所に復職後,2001年に退職。2001年,北里大学大村智記念研究所・教授。2002年,北里大学大学院感染制御科学府・教授。
    細菌学のラスト・フロンティアと言えば,おそらく多剤耐性菌の克服にあるのかも知れません。新たな抗菌薬を開発してもすぐに耐性菌が現れるので製薬企業が尻込みしている領域でもあります。現在,大学院生の指導を行いながら多剤耐性菌を克服するプロジェクトに挑戦しております。趣味はブラジリアン柔術(黒帯),登山,パックラフト。思い出深い山行として,平ヶ岳,甲子旭岳,鳩待峠からの会津駒ヶ岳(いずれも残雪期)などがあります。また,パックラフトによる西表島最深部の探検は今でも継続中です。

    阿部 章夫

    阿部 章夫
    専門分野:
    細菌学

    1961年 福島県生まれ。1986年,北里大学大学院薬学研究科修士課程を修了し北里研究所に入所。1991年博士(薬学)を取得。1995年~1999年,University of British Columbia (Canada) に留学。北里研究所に復職後,2001年に退職。2001年,北里大学大村智記念研究所・教授。2002年,北里大学大学院感染制御科学府・教授。
    細菌学のラスト・フロンティアと言えば,おそらく多剤耐性菌の克服にあるのかも知れません。新たな抗菌薬を開発してもすぐに耐性菌が現れるので製薬企業が尻込みしている領域でもあります。現在,大学院生の指導を行いながら多剤耐性菌を克服するプロジェクトに挑戦しております。趣味はブラジリアン柔術(黒帯),登山,パックラフト。思い出深い山行として,平ヶ岳,甲子旭岳,鳩待峠からの会津駒ヶ岳(いずれも残雪期)などがあります。また,パックラフトによる西表島最深部の探検は今でも継続中です。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    植物もお酒が好き!?
    植物もお酒が好き!?

    戸高 大輔

    私が取り組んできた研究は、植物の環境ストレス耐性についてです。植物は動物と違って寒さや暑さ、乾燥などの環境ストレスから動いて逃れることができないのでその場で対処する必要があります。従って環境ストレスに対する耐性機構が発達しているといわれています。最近我々は植物にエタノール水溶液(0.1%というとても薄い濃度)を与えると植物が環境ストレスに強くなることを発見しました。濃いと死んでしまうのでほどほどがいいようです。


    戸高 大輔

    戸高 大輔専門分野:植物学

    2003年、東京農工大学大学院連合農学研究科博士後期課程修了. 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)にてポスドク、東京大学農学部応用生命化学専攻にて特任助教、特任准教授としてイネを対象とした環境ストレス応答に関する研究に取り組む. 2年半前より理化学研究所環境資源科学研究センターに移り研究員としてシロイヌナズナ、トマト、コムギ、シバなどを用いて環境ストレス耐性を高める栽培技術の研究に従事している.

    戸高 大輔

    戸高 大輔
    専門分野:
    植物学

    2003年、東京農工大学大学院連合農学研究科博士後期課程修了. 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)にてポスドク、東京大学農学部応用生命化学専攻にて特任助教、特任准教授としてイネを対象とした環境ストレス応答に関する研究に取り組む. 2年半前より理化学研究所環境資源科学研究センターに移り研究員としてシロイヌナズナ、トマト、コムギ、シバなどを用いて環境ストレス耐性を高める栽培技術の研究に従事している.

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    山岳空間の近代史
    山岳空間の近代史

    一色 智仁

    私は建築学の立場から山小屋を研究しています。山岳地域に立地する山小屋は、ときに独自の生存戦略をとりながら、厳しい地形や気候条件のなかで生き残ってきました。すでに山小屋に関しては多くの先行研究がありますが、山域ごと山小屋ごとの個別的なまとめにとどまっており、それらの総体として浮かび上がってくる日本の山岳空間全体の姿を描くことが研究の大きな目的です。具体的な内容としては、『山日記』や『山岳』をはじめとした山岳文献の分析、全国の山小屋をまわりヒアリングや実測を行うフィールドワーク、史料調査と現地調査の双方から研究を進めています。レクチャーでは、雲ノ平周辺の近代空間史についても触れられたらと思います。

    建築学会Webメディア「建築討論」での連載リンク


    一色 智仁

    一色 智仁専門分野:建築史・理論

    東北大学工学研究科五十嵐太郎研究室 博士後期課程
    1997 年生まれ。2018 年国立明石工業高等専門学校卒業、東北大学工学部編入学。主要な論文に
    ・東北地方における登山道と山小屋の推移(2021 年度日本建築学会大会学術講演会 建築歴史・意匠部門 若手優秀発表賞)
    ・山岳空間の様相と歴史:自然公園内における避難小屋を主題として(トウキョウ建築コレクション2022 全国修士論文展 加藤耕一賞)
    などがある。

    一色 智仁

    一色 智仁
    専門分野:
    建築史・理論

    東北大学工学研究科五十嵐太郎研究室 博士後期課程
    1997 年生まれ。2018 年国立明石工業高等専門学校卒業、東北大学工学部編入学。主要な論文に
    ・東北地方における登山道と山小屋の推移(2021 年度日本建築学会大会学術講演会 建築歴史・意匠部門 若手優秀発表賞)
    ・山岳空間の様相と歴史:自然公園内における避難小屋を主題として(トウキョウ建築コレクション2022 全国修士論文展 加藤耕一賞)
    などがある。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    細菌学者が山を歩いて考えること
    スマホと山伏

    天田 顕徳

    日本の山岳信仰「修験道(しゅげんどう)」を研究しています。特に関心があるのが現代の修験道。学生時代、仲間が海外留学をして外国語を覚えてくる中で、山に通いつめてお経を沢山覚えてきました。
    こんなに便利な世の中で、山伏たちは今日もどこかの山で修行をしています。「スマホと山伏」。一見ミスマッチなタイトルですが、現代社会に生きる山伏たちが何を思い、どう生きているのか。山伏と修行をともにする中で、私が見聞きしたことの一端をお話しします。山伏たちのいとなみ中に、現代社会を生きるあなたにとって必要な「処方箋」が見つかる……、かもしれません。
    最近は、山伏たちと協働して、まちづくりや環境保全活動に力を入れています
    (詳細は
    https://dewagateway.jp)。今回の話は「科研:山岳信仰の聖地におけるロッククライミングのゲレンデ整備に関する基礎研究」の研究成果を用いています。


    阿部 章夫

    天田 顕徳専門分野:宗教社会学・民俗学・観光学

    北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 准教授
    1982年、千葉生まれ。筑波大学大学院 人文社会科学研究科、哲学・思想専攻終了。博士(文学)。國學院大学日本文化研究所研究補助員、東京家政大学非常勤講師などを経て現職。主著に『現代修験道の宗教社会学  山岳信仰の聖地「吉野・熊野」の観光化と文化資源化』(岩田書院、2019)など。

    阿部 章夫

    天田 顕徳
    専門分野:
    宗教社会学・民俗学・観光学

    北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 准教授
    1982年、千葉生まれ。筑波大学大学院 人文社会科学研究科、哲学・思想専攻終了。博士(文学)。國學院大学日本文化研究所研究補助員、東京家政大学非常勤講師などを経て現職。主著に『現代修験道の宗教社会学  山岳信仰の聖地「吉野・熊野」の観光化と文化資源化』(岩田書院、2019)など。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    モンゴルの移動式住居ゲルでの暮らしと空間利用
    モンゴルの移動式
    住居ゲルでの
    暮らしと空間利用

    寺尾 萌


    寺尾 萌

    寺尾 萌専門分野:社会人類学

    1987年長野県生まれ。
    2020年首都大学東京大学院満期退学、2022年から現職の鹿児島大学法文学部・特任研究員。最近の著書として、「『良い酒』とはいかなるものか―つくり手の仕事からみた酒づくりとモンゴルの乳文化」大坪玲子・谷憲一(編)『嗜好品から見える社会』春風社(2022年)。
    私は長野県長野市出身で、本格的な登山経験は少ないですが、幼い頃から飯綱山でのキャンプやキノコ、山菜の採集などに連れられ、山に親しみながら育ちました。2010年から首都大学東京(現・東京都立大学)大学院で社会人類学を学び、モンゴル(モンゴル国)の牧畜地域を対象として人類学的研究に従事してきました。現在はとくに、モンゴルの伝統的移動式住居である「ゲル」と外部環境との間にある境界の脆弱性に関心をもち、その内部で育まれる家族の親密圏がいかなる特徴を持っているのかに注目した研究を行っています。

    寺尾 萌

    寺尾 萌
    専門分野:
    社会人類学

    1987年長野県生まれ。
    2020年首都大学東京大学院満期退学、2022年から現職の鹿児島大学法文学部・特任研究員。最近の著書として、「『良い酒』とはいかなるものか―つくり手の仕事からみた酒づくりとモンゴルの乳文化」大坪玲子・谷憲一(編)『嗜好品から見える社会』春風社(2022年)。
    私は長野県長野市出身で、本格的な登山経験は少ないですが、幼い頃から飯綱山でのキャンプやキノコ、山菜の採集などに連れられ、山に親しみながら育ちました。2010年から首都大学東京(現・東京都立大学)大学院で社会人類学を学び、モンゴル(モンゴル国)の牧畜地域を対象として人類学的研究に従事してきました。現在はとくに、モンゴルの伝統的移動式住居である「ゲル」と外部環境との間にある境界の脆弱性に関心をもち、その内部で育まれる家族の親密圏がいかなる特徴を持っているのかに注目した研究を行っています。

  • Vo.3 9.22.FRI
    Vo.3 9.22.FRI
    日本と雲南の山間集落から考える「自然」の価値
    日本と雲南の
    山間集落から考える
    「自然」の価値

    阿部 朋恒


    阿部 朋恒

    阿部 朋恒専門分野:社会人類学

    1979年生まれ。
    2018年首都大学東京大学院満期退学、日本学術振興会特別研究員PDを経て、2022年から現職の立命館大学先端総合学術研究科・准教授。主な著作は、「もてなしのポリティクス―中国雲南省ハニ族における饗宴を事例として」『文化人類学』85 (1),110-126頁(2020年)。
    旅から学問へ転身したクチ。山での暮らしが両者を貫くテーマ。旅歴は日本縦断(徒歩)・一周(自転車)、ジョン・ミューア・トレイル340km(無補給縦走)、タクラマカン砂漠~チベット高原4,200km(自転車)、ホータン河(カヤック・230㎞地点で断念)など。学問では、中国雲南省南部で行った4年半ほどのフィールドワークをもとに、ハニ族の山地での暮らしを人類学の立場から研究してきた。昨年より京都北部の中山間地域に住みながら、山で暮らすことの今日的な魅力と可能性について思案している。

    阿部 朋恒

    阿部 朋恒
    専門分野:
    社会人類学

    1979年生まれ。
    2018年首都大学東京大学院満期退学、日本学術振興会特別研究員PDを経て、2022年から現職の立命館大学先端総合学術研究科・准教授。主な著作は、「もてなしのポリティクス―中国雲南省ハニ族における饗宴を事例として」『文化人類学』85 (1),110-126頁(2020年)。
    旅から学問へ転身したクチ。山での暮らしが両者を貫くテーマ。旅歴は日本縦断(徒歩)・一周(自転車)、ジョン・ミューア・トレイル340km(無補給縦走)、タクラマカン砂漠~チベット高原4,200km(自転車)、ホータン河(カヤック・230㎞地点で断念)など。学問では、中国雲南省南部で行った4年半ほどのフィールドワークをもとに、ハニ族の山地での暮らしを人類学の立場から研究してきた。昨年より京都北部の中山間地域に住みながら、山で暮らすことの今日的な魅力と可能性について思案している。