雲ノ平山荘の物作り|Handcraft Works

雲ノ平山荘

Handcraft Works

食堂長机

Cafeteria Long Table -2018-

山荘を新築した時から、食堂や一階ロビーの机や椅子類を新たにすることは計画していたものの、雑事に追われてなかなか実現できずにいた。僕も木工が好きだとはいえ、プロの職人ではないので、品質にこだわるとそれなりに時間がかかる。一個仕上げるのに1週間程度だろうか。

2018年の夏に、ようやく食堂の机づくりに着手できた。天板となるミズナラの板は岐阜県飛騨市の懇意にしている材木屋で仕入れたものだ。ミズナラは古来ヨーロッパの家具作りでよく使われる木材で、力強さとエレガンスを両立させた印象を感じさせる。当初はこれで二つ分の机の天板を取るつもりでいたものの、いざ山荘で梱包を解いて改めて見てみると、その立派さにとてもじゃないが切断する気になれず、方針を変えて大きな長机として仕上げることにする。

ついては、この数年密かなテーマとなっている「最小限の質量」で研ぎ澄まされたシルエットを持ち、かつ機能的で素朴さも兼ね備えたデザインを試みることに。これだけ大きな板を物量を投じずに「すっきりと」支えるためには、やはりアイアン素材との融合が良いだろうという判断になり、またしても金属工芸家の羽入直記氏に脚とフレームの製作を依頼することにした。

当初はこれほど大きな机を作るつもりではなかったため、完成後に取り回しなどで問題が生じたときのために、脚をねじ込み式にし、簡単に解体できるようにした。また、シンプルな分テクスチャーで存在感を強調しないと、当たり障りのない印象になりかねないと思い、アイアンの脚の表面を手斧でハツったような削り跡で覆ってもらうことにした。
結果、なかなかの名作になったのではないかと思っている。

素材:天板:ミズナラ・脚:アイアン / 寸法:長2400mm×幅770mm×高710mm